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心理学ワールド 79号 Over Seas 母校で取るサバティカル 辻 竜平(近畿大学) | 日本心理学会

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Academic year: 2021

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39 Profile─辻 竜平 東京大学大学院人文社会系研究科社 会心理学研究室助手,明治学院大学心 理学部専任講師・助教授・准教授,信 州大学人文学部准教授・教授を経て, 2017年より現職。専門は社会ネット ワーク分析。著書は『中越地震被災 地研究からの提言』(ハーベスト社), 『ソーシャル・キャピタルと格差社 会』(共著,東京大学出版会)など。

母校で取るサバティカル

近畿大学総合社会学部 教授

辻 竜平

(つじ りゅうへい)  前任校でサバティカルを2016 年度後期の半年間もらえることに なりました。しかし,半年という のは,いかにも短いものです。そ のため,少しでも有意義な時間を 過ごそうと,母校でサバティカル を取ることにしました。私の母校 は,カリフォルニア大学アーバイ ン校(UCI)です。LAから車で 1時間ほど南下したアーバイン市 にある州立大学です。地中海性気 候で,年間を通じて雨はほとんど 降らず,ビーチも近い,まさにこ の世の天国といったところです。  今回の渡米の目的の一つが,日 系人や米国在住の日本人の生活や 交流について観察したり体験した りすることでした。トランスナ ショナル・コミュニティが,私の 専門である社会ネットワーク理論 の観点からどのように捉えられそ うかを考えるきっかけにしたいと 思ったのです。そこで,以前から の日本人の知人宅に安値で居候 させてもらうことになり,ミドル クラスの生活や,ホスト宅内外の パーティ,ホストの所属集団にお ける交流を垣間見ることができま した。日本人と日系人との小さか らぬ断絶の話も聞きました。2016 年の大統領選挙のことで日系誌に 記事を書いたり,日本の補習校あ さひ学園で高校生を相手に講演し たりしました。また,近年資料館 などが充実している満マン砂ザ那ナの日本 人収容所跡地の訪問もしました。 いずれも貴重な経験でした。  慣れているはずと思っていた米 国生活でしたが,20年もブランク があると,大いに変わっているも のです。驚いたことをひとつ。銀 行のIT化は日本以上に進んでい ました。いくつかの大手銀行間で は,相手の口座番号がわからなく ても送金ができてしまいます。ス マホに登録されているメールアド レスや住所など複数の情報が,銀 行が持っている情報と一致すれ ば,本人と認証され,送金ができ るという仕組みです。アメリカ人 の少しでも便利なサービスをとい う先取の精神は,まだまだ見習う ところがあるように思います。  さて,UCIは,私が専門として いる社会ネットワーク分析におい ては,世界的な拠点の一つです。 私が大学院生だった頃には,中心 性指標で有名なLinton Freeman がおり,大学院のプログラムの一 つとして社会ネットワーク分析 プログラムがありました。現在 は,社会ネットワーク分析の最 も読まれている教科書を編んだ Katherine Faustや,私 と 同 世 代 の気鋭Carter Buttsがいます。現 在は数理行動科学研究所(MBS) の大学院プログラムの一部門とし て,社会ネットワーク分析が位置 づけられています。  私はフォーマルな授業ではな く,週に1度,ランチを食べながら 大学院生や教員が自分のアイディ アを発表する「社会ネットワー ク・リサーチ・グループ」に参加 していました。自分のちょっとし たアイディアを気軽に報告して叩 いてもらうといったグループで す。大雑把な感想ですが,いわゆ るホール・ネットワークを扱う分 析においては,伝統的に理論的か つ高度なモデルの開発が行われて おり,その領域から長い間離れて しまった自分には,ちょっと簡単 には追いつけないなという感じ がしました。一方,パーソナル・ ネットワーク研究については,手 法をはじめ,われわれ日本人が悩 んでいることを,向こうでも同じ ように悩んでいることを知り,こ の領域についてはそれほどレベル の違いは感じられませんでした。 違いがあるとすれば,さまざまな 領域の研究者とのコラボレーショ ンによってさまざまな手法が編み 出されていくフレキシビリティが 高いことかと思いました。  最後に,半年という短い期間 に「本拠地」で研究をするのは, やはり楽なものです。近年,サバ ティカルが半年だけしかないとい う話をよく聞きます。引っ越しも 勝手知ったる街だと簡単ですし, 以前と比べて何が変わったかに気 づくことも多いと思います。本拠 地を定めることで,半年でもこれ だけのことが経験できるという参 考になれば幸いです。

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